ふるさと物語 73 『知らぬは仏』昔話と伝説(4)

「ふるさと物語」【73】〈昭和45年6月10日発行「広報しわ」(第179)〉

「広報しわ」に掲載された記事を原文のまま転載する形式により、紫波町の歴史や人物について読み物風に紹介しています。
(第1回昭和37年3月号から第201回昭和56年4月5日号まで掲載)
そのため、現在においては不適切とされる表現や歴史認識がある場合がありますのでご了承願います。

『知らぬは仏』昔話と伝説(4)

ある時、志和の代官が山王海部落を巡察することになりました。そこで、あらかじめ部落のおもだった者集めていろいろと指示を与えましたが、その中に、同日代官休憩所に着いたら、まず「ちょうず」をまわせ、次に「ささ」を出せ、そして料理には「どじょうのくわせごぼう」を出すように、ということがありました。
「ちょうず」とは手水、手洗水のこと、「ささ」は酒のことであり、「どじょうのくわせごぼう」というのはごぼうのささがきを入れたどじょう汁のことです。
山王海の人々にはそのことばが通じません。部落の物知りたちが集まって検討した結果「ちょうず」とはすなわち長い頭のこと、「ささ」とはいうごとく笹の葉のこと、「どじょうのくわせごぼう」とはどじょうの口にごぼうをくわせたものであろう、ということになりました。
当日になりました。代官が休憩所に当てられた民家に着くと入口に頭の長い男が土下座してさかんに首をまわしていました。ふしぎに思った代官が「これこれその方は何をしているのか」とたずねると、脇に控えていた者が「はい、おいいつけのとおり長頭をまわしております。この者は部落一番の長頭でございます」
やがて座敷にはいって正座に着くと、この家の主人が笹の葉をたばねたものをうやうやしく代官の前に差し出しました。代官が「これはなんじゃ」と問うと「はい、おいいつけの笹でございまする」代官はあきれはてて「それでは、どじょうのくわせごぼうはいかがいたした」と、主人はひたいに油汗をうかべながら、「はい、さきほどからどじょうにごぼうをくわせようと思っていろいろためしてみましたが、口が小さくてなかなか思うようにまいりませぬ。今しばらくお待ちくださいませ」
代官は「うワ、ははは」と大笑いしながら、「知らぬは仏じゃ、ああ、よしよし」といいました。
−−−佐藤 正雄(故人)−−−

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