【町長より】町長所信表明演述(令和6年2月26日)/紫波町

はじめに

 令和6年紫波町議会3月会議が開会されるに当たり、町政に対する所信の一端を申し上げ、町民の皆様並びに町議会の皆様のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。

 初めに、令和6年元日に発生した能登半島地震で亡くなられた方々に、改めて哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。そして、被災自治体の行政を担う職員の皆様におかれましては、昼夜を問わず被災者への支援や復旧業務に当たられていることと存じ、これまでのご尽力に深く敬意を表する次第であります。13年前に東日本大震災を経験した私たちには、その復旧はもとより、復興に向けた道のりが計り知れない苦労の連続であることが想像できます。遠く離れた紫波の地から被災地へ心を寄せ続けながら、可能な限りの支援に努めてまいります。

 さて、令和6年度は第三次紫波町総合計画の後期計画の初年度となります。前期計画の4年間はまさに新型コロナウイルス対策と、コロナ禍における行動制限への対応が求められました。昨年5月に感染法上の分類が5類へと移行され、経済活動が再開されて久しくもありますが、その感染力の高さから今も予断を許すものではありません。

 さらに、国内外の情勢に目を向ければ、長引く戦争や紛争が国際社会の不安を招き、物価高騰が家庭や企業経営を直撃しており、未だ回復の兆しが見えない、厳しい状況におかれております。混沌(こんとん)とする政治や経済状況の中で、町の経営戦略が問われる1年になると認識をしております。

 こうした状況においても、私たちの暮らしと営みは立ち止まることが許されません。町はこれまで、第三次総合計画で将来像として掲げている「暮らし心地の良いまち」の実現に向け、歩みを進めてまいりました。昨年12月に供用を開始した古館駅前広場や、紫波中央駅エレベーターの整備、七久保跨線橋の耐震補修など、一つ一つ課題の解決に取り組んできたところであります。

 先般、後期計画策定を諮問した審議会において、委員から「町の人口ビジョンは中央部の話のような気がしてならない。人口が減っている地域で、人口が増える要素はあるのか」とのご発言がありました。町の東部と西部に暮らす住民の中には、同じような思いを持つ方もいると思いますので、私の考えをお伝えいたします。
 私は西部の山際で暮らしておりますが「これ以上何を望むものがあろうか」という思いで生活しております。確かに地域の人口は減りましたが、里山は豊かな自然と資源にあふれ、先人たちが築いた生活インフラにより、町の中心部まで車で15分という環境にあります。私にとって「暮らし心地の良さ」とは、「人と人との距離感をどうつくるか」であり、おかれた環境において「自分のこれからの人生をいかに充実して過ごすか」であります。

 時代の流れが速く予測困難な現代の中で、町は総合計画において「協働・公民連携、多様性のあるまちづくり」を公共経営の根本に据えて邁進してまいりました。これからも、ここに暮らし、自分の事として地域づくりを行う住民の皆様、新しい公共を担うNPOや市民活動団体の皆様、地域経済をけん引し雇用を維持している企業や農業者の皆様、そして町が、共に力を合わせることにより、「暮らし心地の良いまち」を実現していかなければなりません。それが、先人から私たち、そして子孫へと受け継いでいく大切なつながりの中で、共に支えあい、助け合って命をつなぎ、町をつないでいくことであります。

 この考えを基礎として、令和6年度は総合計画後期基本計画のもと、まちづくりの基本理念として掲げる「循環、協働、多様性のあるまちづくり」をさらに推進してまいります。平成12年から取り組んでいる循環と環境政策につきましては、昨年4月に脱炭素先行地域として選定されたことを契機に取組をさらに深化させてまいります。「協働」につきましては、住民の皆様の自治を尊重し、新設する「地域づくり課」において役場内を横断的に調整し、公的支援を進めてまいります。「多様性」につきましては、多様化するニーズへの対応のみならず、多様な主体と共に、住民それぞれが活躍できるよう支援してまいります。

 私の信条は就任以来、「スマイル・フットワーク・チームワーク」であり、全職員に周知を図ってまいりました。笑顔で相談しやすい職場づくりによって組織力を最大限に発揮し、すぐやれることはすぐ取り掛かり、より良い行政サービスを実践することが、町民の皆様の信頼に応えることとなり、各分野で町民の皆様と共創することで、「暮らし心地の良いまち」の実現につながると確信しております。

 それでは、令和6年度の町政の方針及び重要施策についてご説明をいたします。
 人口減少対策としましては、これまで取り組んできた「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を推進しながら、次のとおり出産・子育て関連施策及び移住定住支援策の充実を図ってまいります。
 出産・子育て関連施策としましては、子どもを産み育てやすい町を目指し、妊娠期から出産、その後の子育てまで一貫した伴走型相談支援の充実を図るとともに、一体的な経済的支援として出産・子育て応援給付金制度を推進してまいります。また、本年4月には旧星山小学校において「株式会社みんなのみらい計画」が運営する「星山えほんの森保育園」が開園予定であり、地域の皆様や事業者と連携しながら、さらなる子育て支援環境の充実を図ってまいります。
 移住定住支援策としましては、自治体連携で取り組む結婚支援や移住支援の周知を図り、ワンストップ窓口を設け、横断的に支援する体制を構築してまいります。

 次に、課題となっている東部と西部に点在する学校跡地の活用につきましては、5つの事業が本格的に動き出しております。
 旧彦部小学校では、一般社団法人アイズが令和4年度からバスケットスクールを中心とする「ヒート コア ベース」を始動しております。
 旧星山小学校では、先ほど申し上げましたとおり「星山えほんの森保育園」が開園いたします。
 旧長岡小学校を活用した「ノウルプロジェクト」は、内閣府のデジタル田園都市国家構想交付金を活用し、第3セクターである株式会社マザー・オガール地方創生アカデミーが民間主導による工事に着手するところです。
 旧水分小学校につきましては、「株式会社酒と学校」によるローカル10000プロジェクト等を活用した事業推進を支援し「酒のまち紫波」の推進拠点「はじまりの学校」の整備を順次本格化させてまいります。
 旧片寄小学校につきましては、昨年12月に「SBIエナジー株式会社」を優先交渉権者として選定しており、「カタヨセアエバ」をテーマに今後、次世代複合農業と担い手育成プロジェクトが行われるところであります。

 農業施策につきましては、将来における効率的かつ総合的な農地利用の目標等を盛り込んだ地域計画の策定を行います。町は、その策定過程において町内各地における話し合いを支援し、地域における目指すべき将来の農地利用の姿を明らかにするとともに、このことを地域で共有してまいります。
 脱炭素社会の実現につきましては、昨年4月に環境省「脱炭素先行地域」に選定され進めている「みくまるっと脱炭素化モデル事業」を水分全地区及び新山地区において展開するとともに、他地区においても国や県の支援制度を積極的に活用してCO2排出実質ゼロに向けた取組を加速させてまいります。
 商工観光振興といたしましては、中小企業振興条例の制定や観光振興計画の改定に取り組みます。また、ラ・フランス温泉館を含む温泉保養公園につきましては、令和5年度末に策定予定の「あづまねエリア活性化ビジョン」に基づき、令和6年度には民間活力の誘導、建物・設備状況の調査、「温泉保養公園リニューアル基本構想」の策定を進めてまいります。

 鉄道交通の要である紫波中央駅の環境整備につきましては、令和3年から進められているバリアフリー設備の整備として、在来線ホームエレベーターが完成し、来月3月9日から供用開始の運びとなっております。
 東口改札通路の整備につきましては、東日本旅客鉄道株式会社と昨年6月に整備事業に関する基本協定を締結し、基本設計及び実施設計を進めているところであり、鉄道を中心とした公共交通環境の充実について、引き続き連携しながら取り組んでまいります。

 学校教育につきましては、小中一貫教育を継続し、義務教育9年間を見通した学校運営による「人づくり」と効果的なICT機器の活用により、児童生徒の「資質・能力の向上」を推進してまいります。
 また、大規模な宅地開発などに伴い、赤石小学校区の児童数が増加傾向にあることから、校舎の施設整備を進めてまいります。

 直接的な行政サービスを行っている窓口業務につきましては、情報システムの連携により各課の窓口業務をつなぎ、住民の各種手続きの簡素化と、職員の作業負担の軽減を実現する、いわゆる「書かない窓口」を令和7年度の稼働に向けて進めてまいります。

 行政組織運営につきましては、業務執行の適正化・透明化と、効率的な事務処理を図るため、財務事務における内部統制に取り組んでおり、また、政策面においても、作戦体系を可視化し遂行過程を評価、改善する仕組みを取り入れ、行政サービスの向上を図っております。
 さらに、これらの行政組織運営を行っていく上で必要となるコンプライアンスを確保していくため「(仮称)公正な職務の執行の確保等に関する条例」の制定について、議会9月会議の上程を目途に進めてまいります。

 

新年度予算の見込み

 それでは、本3月会議に提出しております令和6年度当初予算案について、ご説明を申し上げます。

 令和6年度予算は、電気料金やガソリン価格等の燃料価格の高騰、物価の上昇が続くと推測され、経常経費の増加傾向が止まらず、歳出が歳入を大きく上回る見込みとなりました。この対応として、国・県の補助金や地方債、基金を活用しながら財源を確保して編成しております。町民の生命、財産を守る事業、町政の発展のための第三次総合計画に関連する事業に対し、重点的に予算を配分しております。
 令和6年度当初予算案につきまして、予算規模としては、一般会計が152億3,011万1千円で、対前年度比8億2,598万3千円、5.7%の増加となっております。また、一般会計に4つの特別会計と1つの企業会計を合わせた予算総額は245億7,065万5千円となり、対前年度比9億4,998万7千円、4.0%の増加となっております。
 財源につきましては、歳入の柱となる町税が、家屋の新増築等の増加に伴う固定資産税の増加や法人町民税、町たばこ税の増加が見込まれたものの、令和6年度税制改正による定額減税により個人町民税の減少が影響し、総額33億1,119万2千円となり、対前年度比1億5,648万5千円、4.5%減の見込みとなりました。

 次に、令和6年度の主な施策について、ご説明を申し上げます。

1 誰もがその人らしく健やかに暮らせるまち

 第三次総合計画の5つの分野別方針に沿って、具体的な施策を述べてまいります。
 はじめに、誰もがその人らしく健やかに暮らせるまちづくりについてであります。

 今日、地域社会では、少子高齢化や人口減少の進行、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等により、高齢者世帯や単身世帯の増加、8050問題、人と人とのつながりの希薄化、社会的孤立・孤独、経済的困窮など、複雑化・複合化した生活上の諸課題が顕在化してきました。

 このような時代の変化、課題の多様化・複雑化に対応するため、保健、医療、介護、福祉など、分野横断的な包括支援体制を整えながら、町民誰もが住み慣れた地域で、人や社会とつながり、社会全体で支え合い、安心して暮らしていくことができる地域共生社会の実現を目指してまいります。

 一人一人が生きがいを持って健やかに生活するための取組としましては、心身の健康づくりとともに、各種健診、保健指導により、疾病の早期発見、早期治療、生活習慣病の重症化予防を推進してまいります。
 感染症対策につきましては、乳幼児期から高齢者まで対応した幅広い予防接種事業を適切に実施してまいります。特にも、令和5年度から町単独事業として開始した50歳以上の帯状疱疹ワクチン接種への助成を継続するとともに、令和6年度から定期接種となる高齢者の新型コロナワクチン接種への助成を行い、発症予防、重症化予防に努めてまいります。

 母子保健につきましては、母子健康手帳の交付時から、出産後の子育て期にわたり、各種相談や乳幼児健診をはじめ産後ケアなど切れ目なく寄り添った伴走型支援を行い、乳幼児とその家族の安心と健康の保持・増進に努めてまいります。併せて、出産・子育て応援給付金制度により、経済的な支援を行ってまいります。
 医療サービスにつきましては、国民健康保険、後期高齢者医療において、加入者の急激な移行が始まる転換期を迎えており、加入者の負担に配慮しながら、安定的な事業運営に努めてまいります。

 高齢者福祉につきましては、地域包括ケアシステムの深化を進めるとともに、医療介護連携を強化します。制度・分野の枠や「支える側」「支えられる側」という関係を超え、地域住民や多様な主体による介護予防や日常生活支援の取組を支援し、総合事業の充実を図ってまいります。

 介護予防につきましては、各地域の実情に合わせた介護予防サービスが提供できるよう支援するとともに、地域や個々の生活支援、介護予防体制の整備について地域の方々と共に考えながら、地域ぐるみで取組を進めてまいります。
 認知症になっても地域で安心して生活できるよう、認知症に対する理解者・応援者を増やすため、認知症の知識の普及を継続して行います。また、認知症サポーターを中心とした認知症高齢者に対する見守りや生活支援を進めてまいります。
 介護保険事業につきましては、介護サービス事業者と連携協力し、介護サービスの質の確保に努めるとともに、給付と負担のバランスに配慮しながら介護保険制度の円滑な運営に努めてまいります。

 障がい福祉につきましては、自立した生活の実現に向けて、必要な障害福祉サービスを提供するとともに、障がいのある方や日常的に医療的ケアが必要な方と、その家族を取り巻く生活上の課題について、関係機関と連携し地域での支援体制の充実に努めてまいります。
 また、認知症や障がい等によって、一人で判断することに心配や不安がある方の権利を尊重し擁護する成年後見制度の利用について、普及啓発に取り組んでまいります。

 

2 豊かな環境と町の魅力を生かしたなりわいがあるまち

 第2に、豊かな環境と町の魅力を生かしたなりわいがあるまちづくりについてであります。

 産業は町の基盤であることを強く認識し、地域の資源や特徴を最大限に生かした、若者が希望を持てる魅力ある産業の振興に引き続き取り組んでまいります。
 農業振興につきましては、令和7年3月までの策定が求められている「地域計画」の策定作業を本格化させます。地域における将来の農地利用の姿を明確化する話し合いを農業委員会とともに支援することで、農業の維持・発展を目指してまいります。
 また、令和6年度から着工予定の国営土地改良事業「山王海葛丸地区」や継続事業である県営土地改良事業「星山・犬吠森地区」及び「長岡北部地区」を推進することで、農業生産基盤の整備、農地の維持・活用、及び多面的機能の維持が着実に図られるよう支援をしてまいります。
 併せて、昨年4月に持続可能な農業の実現に向けた包括連携協定を締結した株式会社オーレックの協力をいただきながら、食料・農業・農村の魅力を積極的に発信しつつ、各種制度を活用して農業の担い手確保に取り組むとともに、循環型農業と地域特性を生かした産地づくりを進めてまいります。
 畜産振興につきましては、和牛子牛の価格低迷から脱するため、高齢牛の更新に取り組む肉用子牛生産者を臨時的かつ緊急的に支援する「優良繁殖雌牛導入支援事業」を実施してまいります。これらにより、紫波牛のブランド化はもとより、町の循環型農業にとって欠くことのできない畜産を支援してまいります。
 町民生活を脅かす有害鳥獣への対策につきましては、関係機関により構成する紫波町鳥獣被害防止対策協議会の活動を中心に、国の財源を有効活用しながら進めてまいります。令和6年度におきましては、専門家のアドバイスの積極活用、城山公園の監視体制の強化のほか、これまで同様、有害鳥獣捕獲サポート隊の活動支援等、人材育成を図るとともに、農地への侵入防止柵の設置と適正管理の啓発を推進してまいります。

 森林・林業振興につきましては、森林環境譲与税を積極的に活用して、管理されていない私有人工林を町が主体となって整備を進める森林経営管理制度の推進に努めてまいります。また、関係団体と連携して、森林の有する公益的機能が十分に発揮されるよう事業展開を図ってまいります。

 脱炭素社会の実現に向け、昨年4月に認定された環境省脱炭素先行地域事業として、メタン発酵バイオガス発電設備の実施設計、ラ・フランス温泉館とあづまね温泉ききょう荘に再生可能エネルギーを供給するための小規模電力網の基本設計などに着手します。令和4年度から進めてきた紫波型断熱改修事業につきましても継続して実施し、2050年CO2排出実質ゼロに向けた取組を本格化させます。
 ごみ関連施策につきましては、町民、事業者のご理解を得ながら、引き続き排出抑制と適正処理を進めるとともに、盛岡広域におけるごみ処理体制づくりにおいて、町の循環型まちづくりの理念が反映されるよう努めてまいります。
 これらの施策によって、町がこれまで進めてきた、資源循環のまちづくり、環境創造のまちづくり、環境学習のまちづくりをさらに深化させてまいります。

 商工業の振興につきましては、令和6年度に取り組む中小企業振興条例の制定過程において、事業者はもとより町民の皆様に、中小企業の活動が地域社会の発展に重要な役割を果たしていることをご理解いただき、中小企業が意欲的に活躍できるよう、順次条件整備に取り組んでまいります。
 観光交流の促進につきましては、紫波町観光振興計画を改定するとともに、人流の回復を踏まえ、海外からの観光客需要も視野に入れながら、紫波町観光交流協会をはじめとする多様な主体との連携事業に取り組んでまいります。併せて温泉保養公園のリニューアルに向けた検討も引き続き進めてまいります。
 企業誘致につきましては、関係機関と連携しながら継続して取り組みます。雇用・就労につきましては、企業の実情に応じたきめ細やかな対応に努めるとともに、若者が町の産業を知る機会を創出するなど、町内企業の人材確保に向けた取組を進めてまいります。
 物価高騰対策としましては、中小企業及び個人事業者の事業継続や、需要の回復につながる活動、新しい商品・サービスの創出に対する支援や対策について、国の事業を活用するなどして紫波町商工会と連携して講じてまいります。

 

3 自然と調和した安全で快適なまち

 誰もが安心して快適に暮らしていくためには、良好な住環境の確保と都市機能の充実が必要です。
 生活環境の質を向上させるため、駅周辺施設や、生活道路などの交通環境整備により、日常生活における利便性の向上を図るとともに、防災、防犯、交通安全などの対策に取り組み、安全で安心して暮らせるまちづくりを目指してまいります。
 町民の暮らしを支える道路、河川につきましては、社会基盤としての機能を充実させるため、効率的かつ適切に維持・管理してまいります。
 県立紫波総合高等学校東側の七久保跨線橋の耐震補修につきましては、東日本旅客鉄道株式会社と委託協定を締結し、昨年5月から工事に着手しており、令和7年度の事業完了を目指して工事を進めてまいります。
 道路につきましては、未整備路線の改良、舗装、通学路の安全確保に向けた事業を実施してまいります。
 また、県が管理する国道456号と県道25号紫波江繋線の交差点改良工事については、2月16日に一部が供用開始され、県道152号古館停車場線の落合橋整備につきましても、令和6年度中の完成を目指し工事が進められております。国が管理する北上川の築堤工事を含め、これらの事業が早期に完了するよう継続して関係機関と連携を図ってまいります。

 都市計画事業につきましては、令和元年度に着手した古館駅前都市整備事業において、古館駅前広場が昨年12月に完成し供用を開始しており、本年3月をもって町の整備事業が完了の運びとなっております。
 良好な住宅・居住環境の維持・保全につきましては、町の都市計画に関する基本的な事項を定めている「都市計画マスタープラン」の改定及び「立地適正化計画」の作成を令和5年度から進めており、令和6年度中に完成させ、土地利用の指針とする予定です。
 下水道事業につきましては、未普及地域における管きょ整備と管理型浄化槽の設置、汚水処理施設の機能維持のための設備更新を行うほか、近年増加している宅地開発に伴う、汚水量増加に対する幹線管きょの最適化や雨水処理施設付近における溢水(いっすい)リスクの軽減に取り組んでまいります。
 水道事業につきましては、町が管理する簡易給水施設等を岩手中部水道企業団へ統合するため、引き続き協議を進めてまいります。

 便利な公共交通環境づくりにつきましては、デマンド型乗合バス「しわまる号」の利用者が順調に増えておりますことから、町としましても引き続き運行事業者と共に取り組んでまいります。

 令和5年度は消防団の火災予防活動が功を奏し、発災件数が少ない年でありました。災害に強いまちづくりにつきましては、いざというときに町民が自ら命を守る行動を取れるよう正しい防災知識の普及を図るとともに、自主防災組織などによる地域防災体制の充実を図ってまいります。令和6年度はさらに消防施設の充実を図るため、赤沢地区(遠山地内)における第11分団の消防車両の更新を進めるほか、消防団員の処遇改善の一環として、健全で円滑な消防団運営を図るための財政的な支援をいたします。

 交通安全活動及び防犯活動の展開につきましては、昨年10月に暴力団追放活動の功績により岩手県知事並びに岩手県警察本部長の連名表彰を受賞し、同12月には、交通死亡事故を2年3か月間抑止したことへの賞賛状を岩手県警察本部長より授与されました。このことを励みに、今後もより一層、関係機関や関係団体と連携しながら、交通事故や犯罪のない安心して暮らせるまちづくりを推進してまいります。

 

4 郷土を愛し未来を切り拓く人に満ちたまち

 第4に、郷土を愛し未来を切り拓く人づくりについてであります。

 教育の目的は、人格の完成を目指し、社会に貢献しつつ、生きがいをもって人生を送っていく国民・町民の育成を期することであります。将来の予測が不可能な時代において、未来に向けて自らが社会の創り手となり、課題を解決しつつ、持続可能な社会を支持・発展させていく人材育成が求められています。
 
 これらのことに対応するため、町は、令和6年度から始まる紫波町第三次総合計画及び第2期紫波町教育大綱により、幼児期から老年期に至るまで、町民それぞれが生涯を通じて学び、成長し続けることを大切に考えながら、「郷土を愛し未来を切り拓く人づくり」の実現に向け、教育施策を推進してまいります。

 人生の土台である乳幼児期における心豊かな育ちの実現、その源となる家庭が安定して子育てを行えるよう、子どもの育ちと子育て家庭への支援を両輪に捉え総合的に進めるとともに、乳幼児期の豊かな育ちが、就学後により良い形でつながっていくよう取り組んでまいります。

 学校教育では、引き続き「小中一貫教育の推進」「学校運営協議会制度に基づく学校運営」を中心に進めてまいります。なお、国のGIGAスクール構想に基づくICT活用につきましては、未来社会においてその活用が必須の資質・能力となることから、「利用の日常化」から「学びのデジタル化」にそのステージを移行してまいります。

 児童生徒の体をつくっていく学校給食につきましては、安全・安心な給食を安定的に提供するとともに、地産地消を通じて食育の推進を図ってまいります。また、学校給食センターの施設整備につきましては、「新学校給食センター整備基本方針書」に基づき、令和9年度の供用開始を目指し、検討を進めてまいります。

 生涯学習につきましては、その対象が幼少期から老年期までとなることから、就学前施設、小中学校なども含め、関係機関と連携を図りながら、芸術文化活動やスポーツ活動などを進めてまいります。多様化する町民のニーズに対応した事業を推進し、町民一人一人が自分なりの生きがい・楽しさを見いだし、教養を高められる、心豊かな社会の実現を目指してまいります。本町では、ポスト教育振興運動として学校運営協議会と連携し、地区公民館や地域の方々による地域学校協働チームの取組を一層推進してまいります。

 次世代に歴史・文化の継承を図るため、町史編さん、文化財の調査・普及啓発にも努めてまいります。

 

5 多様性とつながりのある暮らし心地の良いまち

 第5に、多様性とつながりのある暮らし心地の良いまちづくりについてであります。

 協働のまちづくり、地域コミュニティにつきましては「地域づくり課」を新設し、環境や地域性が異なる中央部や西部、東部、それぞれの地域の在り方について自ら話し合う場に行政も出向き、地域運営組織等の形成を支援し、地域づくりに取り組む人材の育成と町民の多様な公益的活動を推進してまいります。
 共生社会につきましては、第3次男女共同参画推進計画に基づき、本年4月からパートナーシップ・ファミリーシップ制度の運用を開始します。
 地域のデジタル化につきましては、誰でもデジタル社会の恩恵を受けられるよう取組を継続してまいります。また、町が運営する情報交流館のITサポートコーナーや民間事業者と連携する移動デジタル相談により、デジタル格差の解消に努めてまいります。
 町政情報につきましては、広報紙、電子媒体により情報を発信してまいります。
 情報は、人と人をつなぐコミュニティづくりの土台でもあります。情報交流館や図書館などの拠点を活用しながら、人づくりやまちづくりに必要な情報提供の充実を図ってまいります。

 

行財政運営

 最後に、行財政運営についてであります。

 行政組織に関しましては、複雑化・多様化する住民ニーズに的確に対応するとともに、一層きめ細やかな行政サービスの提供が求められております。定年年齢の引き上げに伴い高齢の職員を配置することから、その経験を生かした組織づくりを進めてまいります。
 職員の人材育成に引き続き取り組み、政策形成過程においてはロジック・モデルを基本とし、内部統制による事務の標準化と、新たに電子文書管理・電子決裁システムを導入することにより、事務処理の適正化の強化を図ってまいります。さらに職務の執行についてはコンプライアンスの確保に取り組むことにより、公正な行政運営に努めてまいります。
 町の行政情報システムにつきましては、紫波町デジタル・トランスフォーメーション推進基本方針を策定し、国が進めるデジタル化の推進に積極的に取り組み、住民サービスの向上のみならず業務の効率化、適正化を図りながら質の高い行政サービスを提供することを目指し、「書かない窓口」の実現に着手すると同時に、町民の皆様が安心して情報システムを利用できるよう、システムセキュリティに万全を期してまいります。
 また、マイナンバーカードの一層の普及と、その機能を活用できる環境を広げることで、住民異動や医療関連の各種手続きが、より簡潔に使いやすくなるよう窓口のサービス向上を図ってまいります。

 町財政においては、企画課内に「ふるさと納税係」を新設し、ふるさと納税による財源確保を一層強化してまいります。また、企業版ふるさと納税やガバメントクラウドファンディングなどの共感資本もいただきながら、多様な行政需要に対応してまいります。
 引き続き社会保障関係費の増加が見込まれるほか、電気料金やガソリン等の燃料価格の高騰、それに伴う物価の上昇等による経常経費の増大など、財政需要への対応により厳しい財政状況が続きますが、改善を図りながら効率的・効果的な行政運営に取り組み、安定的な行財政運営を目指してまいります。

 

むすびに

 令和6年度は、第三次総合計画後期基本計画の初年度に当たります。「暮らし心地の良いまち」の実現に向け、各分野において前期で取り組んだ成果を振り返り、事業内容や計画の見直しを行い、後期の4年間に向けて、多くの分野で成果が表れるよう、全力で取り組んでまいります。
 私たちは、これまでの常識が次々と変わるような時代の転換期の真っただ中を生きています。そのような中においても、変わらずに大切な町民の暮らしを守るとともに、より豊かで魅力あふれる町の未来を築き上げていくため、さまざまな人と手を携えながら、新たな挑戦を続けてまいります。
 議員の皆様をはじめ、町民の皆様におかれましては、今後の町政への取組にご理解、ご協力をいただくとともに、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう心よりお願い申し上げまして、私の所信表明といたします。

 

【町長より】町長所信表明

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