町長所信表明演述(令和7年2月25日)
最終更新日:2025年03月25日

はじめに

 令和7年紫波町議会3月会議が開会されるに当たり、町政に対する所信の一端を申し上げ、町民の皆様並びに町議会の皆様のご理解、ご協力を賜りたいと存じます。
 
 本年は、紫波町制70周年を迎える節目の年であります。これまで町を発展させてこられた先人への感謝を胸に、先人が築き上げてきた町の魅力をさらに高めながら、3月に策定する第3期紫波町まち・ひと・しごと創生総合戦略に基づき、人口減少社会においても、地域経済を活性化させ、便利で暮らしやすく、多様性に富んだ、誰もがその人らしく生きられる「暮らし心地の良いまち」をつくってまいる所存であります。

 国内外の社会情勢を見ると、依然として続いている戦争や紛争、それを一因とする物価高騰が家庭や企業経営を直撃しています。さらに混沌(こんとん)とする政治や経済の状況下において、自治体を取り巻く環境は一層厳しさを増しており、いかにして町を経営していくか、その舵取りは極めて重要であります。

 本町においては、それぞれの地区で状況は異なりますが、次の世代を担う子どもたちの「生きる力」を育むことを基本とし、子育てと教育環境の充実に努めているところであります。
 町中央部においては平成29年度から、民間事業者による宅地造成が盛んに行われ、この8年間で約900区画の宅地が供給されました。これにより、多くの子育て世帯が転入していることから、赤石小学校では令和8年4月の供用開始を目指し、増築工事に着手しております。
 町の東部と西部においては少子化に伴い、平成31年3月に策定した学校再編基本計画に基づき、新たな学校を設置するとともに、小中一貫教育の推進を図っております。また、「こどもの家」につきましても、両地区に新設しているところです。
 赤石地区に整備予定である新学校給食センターにつきましては、令和9年度からの供用開始を目指して、現在、公民連携手法による事業構築を進めております。
 子育てと教育環境の充実を図ることにより、人口減少対策に取り組みつつ、現在より小さい人口規模であっても、多様性に富んだ成長力のある町を構築していく必要があります。

 時代の流れが速く予測困難な現代の中でも、誰もが自分らしく生きられる町であるよう、第三次総合計画後期基本計画のもと、まちづくりの基本理念として掲げる「循環、協働、多様性のあるまちづくり」をさらに推進してまいります。

 私の信条は就任以来、「スマイル・フットワーク・チームワーク」であり、全職員に周知を図ってまいりました。笑顔で相談しやすい職場づくりによって組織力を最大限に発揮し、すぐやれることはすぐ取り掛かり、より良い行政サービスを実践することが、町民の皆様の信頼に応えることとなり、各分野で町民の皆様と共創することで、「暮らし心地の良いまち」の実現につながると確信をしております。

 それでは、令和7年度の町政の方針及び重要施策についてご説明をいたします。

 人口減少や少子化への対策といたしましては、「第3期まち・ひと・しごと創生総合戦略」を推進しながら、次のとおり移住定住支援策や出産・子育て支援施策の充実、関係人口の創出を図ってまいります。
 移住定住支援策としましては、県と連携した移住定住促進や出会い支援、39歳以下の結婚新生活支援に引き続き取り組んでまいります。
 出産・子育て関連施策としましては、4月から新たに「こども家庭センター」を開設し、妊娠期から子どもの成長とともに長く子育てに寄り添い、子育てに関する不安や悩みの解決を支援するための体制を強化いたします。
 関係人口の創出につきましては、学校跡地活用事業やスポーツを活用した地域振興事業などの地方創生関連プロジェクトの推進により、町外の人が町に関わりを持つきっかけをつくるとともに、つながりが生まれた方々に持続的な町の応援者となっていただけるよう、取り組んでまいります。

 次に、東部と西部に点在する学校跡地の活用につきましては、4つの事業が本格的に動き出しております。
 昨年4月には元星山小学校に「星山えほんの森保育園」が開園し、元彦部小学校は「ヒート コア ベース」としてバスケットボールスクール事業に活用されており、さらに、本年2月には元校舎の東側敷地において、「地域と歩む総合型ドッグカフェ事業」を採択したところであります。
 元長岡小学校の「ノウルプロジェクト」は、内閣府の「新しい地方経済・生活環境創生交付金」を活用し、町と第3セクターである株式会社マザー・オガール地方創生アカデミーの公民連携事業として整備を進めており、この4月に一部が供用開始となります。
 元水分小学校における「はじまりの学校」事業につきましては、「株式会社酒と学校」によるローカル10000プロジェクトを活用した施設整備が進み、春以降に醸造が開始される予定となっております。
 元片寄小学校と元赤沢小学校につきましても、民間事業者から関心が寄せられており、「産業の振興」と「人材の育成」につなげるべく手続きを進めてまいります。

 産業振興につきましては、担い手の確保・育成に取り組むとともに、事業活動が継続できる環境の維持・創出に努めてまいります。また、ラ・フランス温泉館を含む温泉保養公園の再整備につきましても、事業の具体化に向け基本構想の策定を進めてまいります。
 脱炭素社会の実現につきましては、引き続き脱炭素先行地域事業等に取り組み、CO2排出実質ゼロに向けた取組を進めてまいります。

 鉄道交通の要である紫波中央駅の環境整備につきましては、バリアフリー設備の整備として、在来線ホームのエレベーターが昨年3月に完成しました。引き続き、東口通路の整備について、東日本旅客鉄道株式会社と連携しながら取り組んでまいります。

 学校教育につきましては、小中一貫教育を継続し、義務教育の9年間を見通した学校運営による「人づくり」と学校運営協議会制度による「地域とともにある学校づくり」を通じて、児童生徒の「資質・能力の向上」を推進してまいります。

 町制70周年記念事業としましては、これまで町の発展に貢献された功労者を讃えるとともに、本町のさらなる飛躍と発展を誓うため、10月に記念式典を挙行する予定であります。

 行政サービスのデジタル化につきましては、便利で快適な窓口サービスの実現を目指して準備を進めてまいりました「書かない窓口」のサービスを3月から始めます。手続きの簡素化と待ち時間の短縮を図るため、キャッシュレス決済サービスとともに稼働いたします。来庁されるお客様に喜んでいただけるよう、窓口サービスの向上に努めてまいります。

 行政組織運営につきましては、業務執行の適正化・透明化と、効率的な事務処理を図るため、財務事務における内部統制に取り組んでおります。また、政策面においても、作戦体系を可視化、遂行過程を評価、改善する仕組みを取り入れ、行政サービスの向上を図っております。
 さらに、これらの行政組織運営を行っていく上で必要となるコンプライアンスを確保していくため「公正な職務の執行の確保等に関する条例」を制定したところです。


 

新年度予算の見込み

 それでは、本3月会議に提出しております令和7年度当初予算案について、ご説明を申し上げます。

 令和7年度予算は、町民の生命・財産を守る事業、町政の発展のための第三次総合計画に関連する事業に対し、重点的に予算を配分いたしました。
 赤石小学校の増築などの大規模普通建設事業のほか、物価高や人件費の増加に伴う経常経費の増加が止まらず、歳出が大きく増加する見込みとなりましたが、この対応として、国・県の補助金や地方債、基金を活用しながら財源を確保して予算を編成しております。
 予算規模として、一般会計は171億2,984万1千円で、対前年度比18億9,973万円、12.5%の増加となっております。また、一般会計に4つの特別会計と1つの企業会計を合わせた予算総額は268億9,632万3千円となり、対前年度比23億2,566万8千円、9.5%の増加となっております。
 財源につきまして、歳入の柱となる町税は、家屋の新築等の増加に伴う固定資産税の増加や令和6年度に定額減税の影響を受けた個人町民税の増加が見込まれ、対前年度比3億2,661万9千円、9.9%増の総額36億3,781万1千円となる見込みです。

 次に、令和7年度の主な施策について、ご説明を申し上げます。


1 誰もがその人らしく健やかに暮らせるまち

 第三次総合計画の5つの分野別方針に沿って、具体的な施策を述べてまいります。
 はじめに、誰もがその人らしく健やかに暮らせるまちづくりについてであります。

 新型コロナウイルス感染症の分類は5類に変わりましたが、国内外では現在も様々な感染症が流行しており、感染症への不安は私たちの生活に影響を及ぼし続けています。また、物価の高騰はとどまるところを知らず、私たちの日々の暮らしに影響を与えております。町の人口が減少する一方で、新たな住宅地も形成され、地域のつながりや支え合いの関係づくりの維持が大きな課題となってきました。保健、医療、介護、福祉など、分野横断的な包括支援体制を整えながら、誰もが社会とつながり、支え合う地域共生社会の実現を目指してまいります。

 毎日を健やかに生活するため、各種健診、保健指導により、疾病の早期発見、早期治療、生活習慣病の重症化予防を推進してまいります。
 感染症対策につきましては、乳幼児期から高齢者まで幅広い予防接種事業を適切に実施してまいります。特にも、令和7年度から定期接種となる高齢者の帯状疱疹ワクチン接種については、対象者への周知に努め、新型コロナワクチン接種の継続とともに取り組んでまいります。

 母子保健につきましては、妊娠期から就学期以降まで、子どもの健やかで心豊かな育ちに切れ目なく寄り添う伴走型支援を行うため、新たに「こども家庭センター」を開設いたします。支援を必要とする子どもとその家庭を大きく包む相談支援体制の構築を図ってまいります。併せて、妊婦のための支援給付金制度により、子育て家庭への経済的な支援を行ってまいります。

 国民健康保険、後期高齢者医療におきましては、1人当たりの医療費の増加傾向が続いていることから、重症化予防、早期の発見と治療など、医療適正化の取組を強化しつつ、加入者の負担にも配慮しながら安定的な事業運営に努めてまいります。

 高齢者福祉につきましては、地域包括ケアシステムの更なる充実を図ってまいります。介護保険事業の安定的運営を軸としながら、地域で活動する個人や団体とともに、介護予防事業、生活支援事業の活動を推進してまいります。認知症対応や医療介護の連携につきましては、関係機関との連携を強化するとともに、幅広い理解の促進に努めてまいります。

 介護予防につきましては、各地域で行われている活動を支援するとともに、一体的な介護予防事業の展開に努めてまいります。また、認知症高齢者の地域生活を支援するため、認知症サポーターの育成と活動支援に取り組んでまいります。
 介護保険事業につきましては、介護サービス事業者と連携し、介護サービスの質の確保に努めるとともに、給付と負担のバランスに配慮しながら介護保険制度の円滑な運営に努めてまいります。

 障がい福祉につきましては、個々の障がいに応じた必要なサービスを提供するとともに、自身や家族を取り巻く生活上の課題について、権利が守られ自分らしく生活できるよう関係機関と連携し、地域での支援体制の充実に努めてまいります。


 

2 豊かな環境と町の魅力を生かしたなりわいがあるまち

 第2に、豊かな環境と町の魅力を生かしたなりわいがあるまちづくりについてであります。
 
 産業は人の暮らしの基盤であり、その振興は「暮らし心地の良いまち」につながるものであります。豊かな環境のもと、町の産業が地域の資源や特徴を最大限に生かした、町に関わる多くの人にとって魅力ある産業となるよう、引き続き各種施策を展開してまいります。

 農業振興につきましては、各地域において策定される「将来の農地利用を明確化する地域計画」の具現化に向けた取組を支援し、農業の維持・発展を目指してまいります。
 また、国営土地改良事業「山王海葛丸地区」や県営土地改良事業「星山・犬吠森地区」及び「長岡北部地区」を推進することで、農業生産基盤の整備、農地の維持・活用、及び多面的機能の維持が着実に図られるよう支援してまいります。
 併せて、国における食料・農業・農村基本計画の動向を注視しつつ、町の魅力を積極的に発信し、各種制度を活用して農業の担い手確保に取り組むとともに、循環型農業や地域特性を生かした産地づくりを進めてまいります。
 畜産につきましては、飼料価格の高止まりや和牛子牛の価格低迷が続いている危機的状況を踏まえ、構造的な課題解決に向け国・県への支援要望活動を引き続き展開するなどし、振興を図ってまいります。

 有害鳥獣への対策につきましては、関係機関により構成する紫波町鳥獣被害防止対策協議会の活動を中心に、国の財源を有効活用しながら引き続き力強く進めてまいります。町民への有害鳥獣に関する速やかな情報提供や、城山公園における監視体制の継続のほか、有害鳥獣捕獲サポート隊の活動支援等、人材育成を図るとともに、農地への侵入防止柵の設置と適正管理の啓発を推進してまいります。
 森林・林業振興につきましては、森林環境譲与税を積極的に活用して、管理されていない私有人工林を町が主体となって整備を進める森林経営管理制度の推進に引き続き努めてまいります。また、関係団体と連携して、森林の有する公益的機能が十分に発揮されるよう事業展開を図ってまいります。

 脱炭素社会の実現に向けては、環境省脱炭素先行地域事業のほか、断熱改修の普及啓発の取組も併せて実施し、2050年CO2排出実質ゼロに向け鋭意取り組んでまいります。
 ごみ施策につきましては、町民、事業者のご理解を得ながら、引き続き排出抑制と適正処理を進めるとともに、盛岡広域におけるごみ処理体制づくりにおいては、最小の費用負担で、かつ循環型まちづくりの理念が最大限反映されるよう努めてまいります。

 商工業の振興につきましては、中小企業振興条例に基づく協議の場として「中小企業振興会議」を設け、実効性のある対策を取りまとめ、中小企業が活躍できるよう、順次取組を進めてまいります。また、かねてより懸案となっておりました日詰商店街公衆トイレ「せせらぎ」の建替工事を実施いたします。
 観光交流の促進につきましては、第四次紫波町観光振興計画の改定過程で明らかになった案内機能の強化などの課題に着手し、インバウンドの視点も加え、紫波町観光交流協会をはじめとする多様な主体との連携により取り組んでまいります。併せて令和7年度において温泉保養公園の再整備に関する基本構想を策定し、令和8年度以降のリニューアルに向け万全を期してまいります。
 企業誘致につきましては、関係機関と連携しながら、立地を希望する企業の町内立地実現に向け継続して取組を進めてまいります。また、雇用・就労につきましては、企業の実情を捉えつつ、若者が町の事業所を知る機会を創出し、町内企業の人材確保に向けて取り組んでまいります。
 物価高騰対策としましては、国の事業を効果的に活用して事業者支援策及び消費者支援策を積極的に講じてまいります。

 

3 自然と調和した安全で快適なまち

 第3に、自然と調和した安全で快適なまちづくりについてであります。

 誰もが安心して快適に暮らしていくためには、良好な住環境の確保と都市機能の充実が必要です。
 生活環境の質を向上させるため、駅周辺施設や、生活道路などの交通環境整備により、日常生活における利便性の向上を図るとともに、防災、防犯、交通安全などの対策に取り組み、安全で安心して暮らせるまちを目指してまいります。
 町民の暮らしを支える道路、河川につきましては、社会基盤としての機能を充実させるため、効率的かつ適切に維持・管理してまいります。
 県立紫波総合高等学校東側の七久保跨線橋の耐震補修につきましては、東日本旅客鉄道株式会社と委託協定を締結し、令和5年5月から工事に着手しており、本年10月の供用再開を目指して進めているところです。
 道路につきましては、老朽化が進む舗装や橋梁の長寿命化対策を進めるとともに、通学路の安全確保に向けた事業を実施してまいります。
 また、交通量の多い西部開拓線の県道昇格に向けては、町からの個別要望に加え、昨年12月に沿線市町で設立した盛岡南部幹線道路協議会による要望活動などで、働きかけを強化してまいります。なお、県が管理する国道456号と県道25号紫波江繋線の交差点改良工事や県道152号古舘停車場線の落合橋整備につきましては、本年度中の完成を目指し工事が進められており、国が管理する北上川の築堤工事を含め、早期に完了するよう継続して関係機関と連携を図ってまいります。

 都市計画事業につきましては、新たに紫波中央駅周辺地区整備事業に着手し、駅前広場を含めた紫波中央駅東口通路の整備に取り組んでまいります。
 良好な住宅・居住環境の維持・保全につきましては、令和5年度から改定等に取り組んでまいりました「都市計画マスタープラン」と「立地適正化計画」を土地利用の指針とし、適正な土地利用の誘導を図ってまいります。また、近年課題となっている空き家対策につきましては、昨年9月に締結した連携協定に基づき、民間事業者と連携を図りながら取り組んでまいります。

 下水道事業につきましては、公共下水道全体計画及び事業計画の改定を進め、未普及地域における管きょ整備と管理型浄化槽の設置などの普及率向上に努めるとともに、ストックマネジメント計画に基づく施設の更新を行い、安定したサービスの継続的な提供を図ってまいります。また、公共下水道雨水管理総合計画に基づく浸水対策として日詰3号幹線の整備を行い溢水(いっすい)リスクの軽減に取り組んでまいります。

 水道事業につきましては、町が管理する簡易給水施設等を岩手中部水道企業団へ統合するため、引き続き協議を進めてまいります。

 町民の生活に欠かせない公共交通につきましては、利用が好調なデマンド型乗合バス「しわまる号」を中心に、鉄道や路線バスを組み合わせた利用を促進してまいります。
 一方で、町内のタクシー不足が深刻化しており、「通院や買い物、夜間の飲食時などの移動に困る」という住民の声が多くなっております。町といたしましてもタクシー不足の解消は喫緊の課題と捉えていることから、タクシー事業者とともに様々な角度から打開策を検討してまいります。
 日詰駅と古館駅のトイレにつきましては、東日本旅客鉄道株式会社が昨年3月に実施した駅無人化に伴う閉鎖により、利用者の皆様にとって大変不便な状態となりました。現在は、両駅に仮設トイレを設置しておりますが、本年の秋までには、駅のトイレを再開できるよう東日本旅客鉄道株式会社と協議を進めてまいります。

 災害に強いまちづくりにつきましては、いざというときに町民が自ら命を守る行動を取れるよう正しい防災知識の普及を図るとともに、自主防災組織などによる地域防災体制の充実を図ってまいります。

 交通安全活動につきましては、交通死亡事故を1,000日抑止したことについて、昨年6月に県知事表彰を授与されましたが、昨年7月以降、今日までに2件の交通死亡事故が発生しております。今後も警察や交通安全団体と連携しながら、交通事故のないまちづくりを推進してまいります。
 また、防犯活動につきましては、防犯活動の功績について、昨年10月に内閣総理大臣から「安全安心なまちづくり関係功労者」として表彰いただきました。このことを励みに、今後もより一層、関係機関や関係団体と連携しながら、犯罪のない安心して暮らせるまちづくりを推進してまいります。


 

4 郷土を愛し未来を切り拓く人に満ちたまち

 第4に、郷土を愛し未来を切り拓く人づくりについてであります。

 教育の目的は、人格の完成を目指し、社会に貢献しつつ、生きがいをもって人生を送る町民の育成を期することであります。これからの予測困難な未来社会に対応していくため、自らが社会の創り手となり、課題を解決しつつ、持続可能な社会を支持・発展させていく人材育成が求められています。
 
 これらのことを達成するため、町では、紫波町第三次総合計画及び第2期紫波町教育大綱に基づき、幼児期から老年期に至るまで、町民それぞれが生涯を通じて学び、成長し続けることを大切に考えながら、「郷土を愛し未来を切り拓く人づくり」の実現に向け、教育施策を推進してまいります。

 こどもの育ちは、乳幼児期から大人まで続き、各段階が次の成長の土台となります。乳幼児期の豊かな育ちが就学後もより良い形でつながるよう、こどもの育ちと子育て家庭への支援を両輪として、一人一人に応じた育ちを保障し、こどもが豊かに育つ環境を整えてまいります。

 学校教育では、引き続き「小中一貫教育の推進」「学校運営協議会制度に基づく学校運営」を中心に進めてまいります。併せて、岩手県教育委員会主導による統合型校務支援システムの導入、国のGIGAスクール構想に基づくICT環境の充実など、教育のDX化をより一層推進し、教育の質や効率の向上を図り、次代を担う児童生徒の「資質・能力」の育成に取り組んでまいります。

 児童生徒の体をつくっていく学校給食につきましては、安全・安心な給食を安定的に提供するとともに、学校での食に関する指導や地産地消を通じて食育の推進を図ってまいります。また、学校給食センターの施設整備につきましては、「新学校給食センター整備基本方針書」に基づき、令和9年度の供用開始を目指し、整備に着手してまいります。

 生涯学習につきましては、その対象が幼少期から老年期までとなることから、就学前施設、小中学校なども含め、関係機関と連携を図りながら、芸術文化やスポーツの振興に努めてまいります。
 紫波運動公園内に本年3月完成予定の「紫波町スポーツ交流施設」につきましては、町民の健康増進やスポーツによる交流推進に寄与できる施設となるよう運営してまいります。
 また、次世代に歴史・文化の継承を図るため、町史編さん、文化財の調査・普及啓発にも引き続き努めてまいります。
 多様化する町民のニーズに対応した事業を推進し、町民一人一人が自分なりの生きがい・楽しさを見いだし、教養を高められる、心豊かな社会の実現を目指してまいります。


 

5 多様性とつながりのある暮らし心地の良いまち

 第5に、多様性とつながりのある暮らし心地の良いまちづくりについてであります。

 協働のまちづくり、地域コミュニティにつきましては、中央部と東部、西部、それぞれにおいて、地域の在り方について自ら話し合う場ができ、地域運営組織等の形成が進んでいます。
 古館地区ではNPO法人が設立され、彦部と佐比内、赤沢、長岡地区でもそれぞれ地域運営組織の設立に向けた準備会が立ち上がっています。各地区の話合いの熟度に合わせ、地域づくりに取り組む人材の育成と町民の多様な活動が促進されるよう、行政として地域づくり指針に基づき支援してまいります。
 共生社会の形成につきましては、第3次男女共同参画推進計画に基づき、性別にかかわらず、人と人がお互いの意思と立場を尊重しながら自立し、支え合い、いきいきと暮らせる社会の実現を目指してまいります。
 地域のデジタル化につきましては、情報交流館でのITサポートコーナーや民間事業者と連携した移動デジタル相談により、町民のデジタル活用を支援してまいります。
 町政情報につきましては、広報紙やホームページに加え、昨年11月にリニューアルした町公式LINE(ライン)により、暮らしに必要な情報を速やかにお伝えしてまいります。
 また、情報交流館や図書館などの拠点を活用しながら、町民の「知りたい」「学びたい」をかなえるとともに、人と人とのつながりづくりを支援してまいります。

 

行財政運営

 最後に、行財政運営についてであります。
 行政組織に関しましては、複雑化・多様化する住民ニーズに的確に対応するとともに、一層きめ細やかな行政サービスの提供が求められております。定年年齢の引き上げに伴い高齢の職員を配置することから、その経験を生かした組織づくりを進めてまいります。
 職員の人材育成に引き続き取り組み、政策形成過程においてはロジック・モデルを基本とし、内部統制による事務の標準化と、新たにこの4月から電子文書管理・電子決裁システムを導入し、適正な事務処理の強化を図ってまいります。さらに職務の執行については、コンプライアンスの確保に取り組むことにより、公正な行政運営に努めてまいります。
 町の行政情報システムにつきましては、紫波町DX推進基本方針に基づき、国が進めるデジタル化の推進に積極的に取り組むとともに、住民サービスの向上のみならず、業務の効率化・適正化を図りながら質の高い行政サービスを提供することを目指し、本年3月から「書かない窓口」の運用をはじめます。いずれの取組も、町民の皆様が安心して行政情報システムを利用できるよう、システムセキュリティに万全を期してまいります。
 また、マイナンバーカードの一層の普及と、その機能を活用できる環境を広げることで、住民異動や医療関連の各種手続きが、より簡潔に使いやすくなるよう窓口のサービス向上を図ってまいります。

 町財政につきましては、令和6年度から企画課内に「ふるさと納税係」を新設して取組を進めており、ふるさと納税額が順調に伸びてきている状況です。今後も企業版ふるさと納税やガバメントクラウドファンディングなどの共感資本による応援もいただきながら、多様な行政需要に対応をしてまいります。
 歳出につきましては、社会保障関係費やこども政策費の増加が見込まれるほか、物価高、人件費の増加等による経常経費の増大など、財政需要への対応により、厳しい財政状況が続きますが、改善を図りながら効率的・効果的な行政運営に取り組み、安定的な行財政運営を目指してまいります。

むすびに

 令和7年度は、第三次総合計画後期基本計画の2年目に当たり、「第3期まち・ひと・しごと創生総合戦略」の初年度となります。「暮らし心地の良いまち」の実現に向け、分野横断的な事業構築を図り、多くの分野で成果が表れるよう、全力で取り組んでまいります。
 社会情勢の変化が著しく、ニーズが多様化する昨今、「いつまでも変わらないものの中に、新しい変化を取り入れる」という不易流行の視点を持ち、柔軟に対応していく必要があると考えます。
 このような中においても、変わらずに大切な町民の暮らしを守るとともに、より豊かで魅力あふれる町の未来を築き上げていくため、様々な人と手を携えながら、新たな挑戦を続けてまいります。
 議員の皆様をはじめ、町民の皆様におかれましては、今後の町政への取組にご理解、ご協力をいただくとともに、ご指導、ご鞭撻(べんたつ)を賜りますよう心よりお願い申し上げまして、私の所信表明といたします。

 

町長所信表明

他のカテゴリを見る
カテゴリ選択