産業政策監調査研究報告第21号「紫波町の認定農業者の特徴と農地の需給見通し」

1.背景とねらい
 これまで人・農地プランは地域での話し合いにより作成されてきましたが、農業経営基盤強化促進法の改正により「地域計画」として法制化され、今年度から作成が本格化しています。
 地域計画の作成に当たり、地域の目標地図の作成が必要とされています。目標地図を作成するためには、地域で離農によって供給されてくる農地面積と認定農業者の農地の需要量をもとに地域の農地の需給見通しを明らかにする必要があります。
 そこで、本報告書では、紫波町の認定農業者の経営改善計画書を用いて地域の農地の受け皿となっている認定農業者の現状を明らかにするとともに認定農業者の農地の需要量を試算しています。
 また離農により供給されてくる農地面積は、農研機構農業情報研究センターの「AIによる農業経営体数の予測モデル」の研究成果を活用させていただいてます。
 今回の分析により、これまで認定農業者の認定審査にのみ使用され定量的な分析が行われていなかった経営改善計画書も地域計画の作成に当たって、有益な情報となることが分かりました。また、旧町村毎に離農経営体数と離農によって供給されてくる農地面積を定量的に予測している「AIによる離農経営体数の予測モデル」の予測値は、地域計画の作成に当たって有益な情報と考えられます。
 今回の農地の需給見通しに使用している農業経営体数と供給農地の予測面積は、2010年と2015年の農林業センサスのデータを利用して予測しているため、当時の社会経済環境を反映したものとなっています。
 これまで、兼業農家の経営主が60歳の定年後に基幹的農業従事者として自家農業に従事したり、地域の集落営農のオペレータとして農業に従事するなど、地域農業の貴重な担い手となってきていましたが、年金受給年齢の引き上げ、定年延長、再雇用などにより、今後60歳を過ぎても他産業に従事する方々が増加すると見込まれ、結果としてこれまで、定年後に農業に還流していた担い手が減少し、地域農業の担い手不足が一気に顕在化してくると考えられます。
 また、これまで農地の引き受け手となってきた個別経営の認定農業者は、高齢化と後継者が確保できずに農地を返却する事例が出てきています。
 我が国の2022年の稲作の基幹的農業従事者の平均年齢は男性71.8歳、女性72.7歳、健康寿命は男性が72.68年、女性が75.38年です。基幹的農業従事者の平均年齢は、まもなく健康寿命に達し、一気にリタイアが進みます。地域計画の作成はまったなしの状況です。
 本報告書を地域での目標地図の作成や地域計画について協議する場合の参考にしていただければ幸いです。


 報告書PDFファイル    
第21号「紫波町の認定農業者の現状と農地の需給見通し」

 

【農政課】調査・研究

他のカテゴリを見る
カテゴリ選択