産業政策監調査研究報告第15号「紫波町の集落営農の特徴と今後の方向」
~集落営農実態調査(農林水産省)の岩手県データの分析から~
農業の担い手は一貫して減少してきており、基幹的農業従事者でみると岩手県全体で2015年から2020年にかけて59,162人から44,458人に25%減少しています。
紫波町においても2015年の1,850人から2020年の1,729人に7%減少しています。
これまで、兼業農家の経営主が60歳の定年後に基幹的農業従事者として自家農業に従事したり、地域の集落営農のオペレータとして農業に従事するなど地域農業の貴重な担い手となってきていました。
しかしながら、年金受給年齢の引き上げ、定年延長、再雇用などにより、今後60歳を過ぎても他産業に従事する方々が増加すると見込まれ、結果としてこれまで定年帰農していた農業の担い手が減少し、地域農業の担い手不足が一気に顕在化してくると考えられます。
もともと集落営農は、個別経営の担い手が不足する地域で地域の農業の担い手として設立が進められてきました。
従来、岩手県では、集落営農という営農形態は、ほとんどありませんでしたが、経営所得安定対策の制度が創設された時期に経営所得安定対策に加入することを目的に急速に設立が進みました。
経営所得安定対策に加入するために経理の一元化がすすめられましたが、構成員の短期間での合意形成を図るため、枝番方式により個別経営の経営形態がそのまま残っている集落営農が多くあります。また5年以内の法人化要件もありましたが現時点での法人化率は30%にとどまっています。
個別経営の担い手不足を補完する形で設立された集落営農も設立から10数年経過し、構成員の高齢化が進み、集落営農の後継者の確保が課題となっています。また法人化した集落営農においても経営規模が小さい法人では後継者が確保できていない状況にあります。
本報告書は、現在多くの課題を抱えている集落営農の今後の方向を検討するために「集落営農実態調査」(農林水産省)を用いて県内の集落営農の現状を俯瞰するとともに紫波町の集落営農の現状を定量的に分析したものです。
分析した結果、紫波町は県内では集落営農の設立数が多く、経営規模も大きく、主たる従事者も多いなど県内の先進的な地域として位置づけられると考えられますが、集落営農を持続的に発展していくためには解決すべき課題も多々あります。
分析した紫波町の集落営農の特徴と課題を踏まえ、今後の集落営農の方向として
1.集落営農の経営の一元化
2.集落営農の規模拡大
3.集落営農の法人化
4.地域の農地を一元的に管理する主体の創設
を挙げました。
本報告書が集落営農の今後の方向を検討する際に役立てていただければ幸いです。
◇分析に使用したデータ
農林水産省 集落営農実態調査 令和4年2月1日現在
◇留意事項
・市町村の順番は集落営農数の多い順に並び変えています。
・市町村ごとの集落営農数の格差が大きいため、市町村ごとの構成比で分析しています。
・県北沿岸部では集落営農数が少ないため、県北沿岸部の分析結果は参考にとどめてください。
調査・研究
第36号「地域計画作成支援と6年間の活動振返り」
第35号「紫波町水分地区の担い手及び農地の見通しと今後の対応方向」
第34号「紫波町における地域・年齢別基幹的農業従事者割合」
産業政策監調査研究報告分類別一覧表について
産業政策監調査研究報告第33号「地域農業持続のためのグランドデザイン」
第32号「地域計画作成に向け想定する水田作経営の担い手の姿と確保方策」
産業政策監調査研究報告第31号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅱ」
産業政策監調査研究報告第30号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅰ」
産業政策監調査研究報告第29号「地域計画作成に向けた集落営農実態調査の分析」
産業政策監調査研究報告第28号「2020年農林業センサス紫波町農業集落別データブック」
産業政策監調査研究報告第27号「地域計画作成に向けた認定農業者の分析と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第26号「地域計画作成に向けた農林業センサスの分析」
産業政策監調査研究報告第25号「産業政策監におけるEBPMとアジャイル型プロジェクト」
産業政策監調査研究報告第24号「紫波町の農業の担い手確保に向けた統計分析と対応方向」
産業政策監の農村政策フェロー小川勝弘が東北農業経済学会学会賞を受賞しました。
産業政策監調査研究報告第23号「地域計画作成に向けた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」
産業政策監調査研究報告第22号「紫波町の作物別経営体数と作付面積の推移と見通し」
産業政策監調査研究報告第21号「紫波町の認定農業者の特徴と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第20号「子実用トウモロコシ産地化の課題と対応方向」
産業政策監調査研究報告第12号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」(令和3年度実績)
産業政策監調査研究報告第13号「農村政策フェロー3年間の活動実績」
産業政策監調査研究報告第14号「地産地消が地域経済と二酸化炭素削減に及ぼす効果の試算」
産業政策監調査研究報告第15号「紫波町の集落営農の特徴と今後の方向」
産業政策監調査研究報告第16号「畑に見いだす新たな価値」
産業政策監調査研究報告第17号「地域の農地を一元的に管理する管理主体の創設」
産業政策監調査研究報告第18号「財務諸表から見た紫波町の集落営農の展開方向」
産業政策監調査研究報告第19号「紫波町の新たな農業の取組みと農村政策フェローのジャンル確立」
産業政策監調査研究報告第1号「紫波町認定農業者の定量的分析と農地の需要見通し」
産業政策監調査研究報告第2号「紫波町の農業経営体数の予測と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第3号「農業体験農園シンポジウムの開催状況」
産業政策監調査研究報告第4号「古館農業体験農園の取組状況と盛岡市市民の農業体験農園の意向」
産業政策監調査研究報告第5号「紫波町の農業生産構造動向分析」
産業政策監調査研究報告第6号「農村政策フェローの活動状況」
産業政策監調査研究報告第7号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」
産業政策監調査研究報告第8号「紫波町における旧町村別農業生産構造の特徴と人・農地プランの実践」
産業政策監調査研究報告第9号「紫波町の旧町村別農業生産構造の動向分析と今後の農業振興策の考え方」
産業政策監調査研究報告第10号「畑からはじまる心地よい暮らしの集い開催状況」~畑を利用して活動している各団体の活動内容~
産業政策監調査研究報告第11号「紫波町における人・農地プランの取組状況」