産業政策監調査研究報告第23号「地域計画作成に向けた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」
地域計画の作成に当たっては、地域での話し合いや意向調査を行い地域の将来の方向を考えるとされていますが、意向調査の場合、回収率が100%にならないことと、設問項目が限られるため、将来の地域農業の担い手と農地の需給状況を定量的に明らかにすることは困難です。また地域での話し合いでは、農業の担い手がいないという危機感が再確認されるものの、将来の具体的な改善策がなかなか見つからないのが実態です。
このため、本報告書では、地域計画を作成するための基礎資料となる紫波町の将来の農業の担い手と農地の需給見通しを明らかにしてきた分析結果と地域での話し合う際のヒントにしてもらうために紫波町で試行しているリーディングプロジェクトを紹介します。
将来の農業の担い手と農地の需給見通しについては、農研機構農業情報研究センターが実施している「AIによる経営体数予測モデル」の予測値、岩手県農業研究センターが公表している「地域農業分析支援シート」のデータを用いて紫波町が独自に分析した予測値、紫波町の認定農業者の経営改善計画の集計結果をもとに、旧町村別に2025年、2030年の農地の需給見通しを明らかにしています。
この結果、今後、農業者の高齢化の進行により農業経営体数と作付面積は、これまでにないペースで急激に減少し、2030年には、紫波町の農業経営体数と作付面積は、2020年に比較し、約6割に減少し、多量の農地が遊休化することが懸念されます。
このため、今後、多量に供給されてくる農地を有効に活用するために、平坦地域、平坦混住地域、丘陵地域、山間地域の地域特性に合わせて、①子実トウモロコシ産地化プロジェクト、②みくまるっと脱炭素化プロジェクト、③つなぐビール連携プロジェクト、④農地一元的管理主体創設プロジェクト、⑤農業体験農園普及プロジェクト、⑥新たなウルシ産業創出プロジェクトの6つのリーディングプロジェクトを試行しています。本報告書では、リーディングプロジェクトで実施している内容と本格実施に向けた課題を提示します。
また、リーディングプロジェクトについて、環境省が公表している「地域経済循環分析システム」と「漏れバケツ理論」を援用しながら、経済効果の試算を行い、リーディングプロジェクトが地域経済循環と二酸化炭素削減に寄与することを紹介します。試算は報告書に示す前提条件のもとに試算していますので、あくまでも参考資料として活用していただくようお願いします。(前提条件を変えると試算結果は異なってきます。)
本報告書は、東北農業経済学会青森大会(2023年9月23日~24日)のシンポジウムにおいて「農地の需給見通しを踏まえた地域農業の複合的展開~岩手県紫波町の取り組みを事例として~」と題して報告したスライドに要約を加えて、紫波町の地域計画を作成するための関係者向けの資料として「地域計画作成に向けた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」と題して取りまとめたものです。
本報告書を地域計画の作成に活用していただければ幸いです。
〇報告書本文
23号「地域計画作成にむけた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」23.10.12修正版公開用.pdf
調査・研究
第35号「紫波町水分地区の担い手及び農地の見通しと今後の対応方向」
第34号「紫波町における地域・年齢別基幹的農業従事者割合」
産業政策監調査研究報告分類別一覧表について
産業政策監調査研究報告第33号「地域農業持続のためのグランドデザイン」
第32号「地域計画作成に向け想定する水田作経営の担い手の姿と確保方策」
産業政策監調査研究報告第31号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅱ」
産業政策監調査研究報告第30号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅰ」
産業政策監調査研究報告第29号「地域計画作成に向けた集落営農実態調査の分析」
産業政策監調査研究報告第28号「2020年農林業センサス紫波町農業集落別データブック」
産業政策監調査研究報告第27号「地域計画作成に向けた認定農業者の分析と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第26号「地域計画作成に向けた農林業センサスの分析」
産業政策監調査研究報告第25号「産業政策監におけるEBPMとアジャイル型プロジェクト」
産業政策監調査研究報告第24号「紫波町の農業の担い手確保に向けた統計分析と対応方向」
産業政策監の農村政策フェロー小川勝弘が東北農業経済学会学会賞を受賞しました。
産業政策監調査研究報告第23号「地域計画作成に向けた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」
産業政策監調査研究報告第22号「紫波町の作物別経営体数と作付面積の推移と見通し」
産業政策監調査研究報告第21号「紫波町の認定農業者の特徴と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第20号「子実用トウモロコシ産地化の課題と対応方向」
産業政策監調査研究報告第12号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」(令和3年度実績)
産業政策監調査研究報告第13号「農村政策フェロー3年間の活動実績」
産業政策監調査研究報告第14号「地産地消が地域経済と二酸化炭素削減に及ぼす効果の試算」
産業政策監調査研究報告第15号「紫波町の集落営農の特徴と今後の方向」
産業政策監調査研究報告第16号「畑に見いだす新たな価値」
産業政策監調査研究報告第17号「地域の農地を一元的に管理する管理主体の創設」
産業政策監調査研究報告第18号「財務諸表から見た紫波町の集落営農の展開方向」
産業政策監調査研究報告第19号「紫波町の新たな農業の取組みと農村政策フェローのジャンル確立」
産業政策監調査研究報告第1号「紫波町認定農業者の定量的分析と農地の需要見通し」
産業政策監調査研究報告第2号「紫波町の農業経営体数の予測と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第3号「農業体験農園シンポジウムの開催状況」
産業政策監調査研究報告第4号「古館農業体験農園の取組状況と盛岡市市民の農業体験農園の意向」
産業政策監調査研究報告第5号「紫波町の農業生産構造動向分析」
産業政策監調査研究報告第6号「農村政策フェローの活動状況」
産業政策監調査研究報告第7号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」
産業政策監調査研究報告第8号「紫波町における旧町村別農業生産構造の特徴と人・農地プランの実践」
産業政策監調査研究報告第9号「紫波町の旧町村別農業生産構造の動向分析と今後の農業振興策の考え方」
産業政策監調査研究報告第10号「畑からはじまる心地よい暮らしの集い開催状況」~畑を利用して活動している各団体の活動内容~
産業政策監調査研究報告第11号「紫波町における人・農地プランの取組状況」