産業政策監調査研究報告第22号「紫波町の作物別経営体数と作付面積の推移と見通し」
これまで、人・農地プランとして作成してきた計画が農業経営基盤強化法の改正により地域計画として作成が法制化され、令和5年度から作成が本格化し2年以内に策定することとなっています。
本報告書は、地域計画を作成するための基礎資料として紫波町の主要作物の経営体数と作付面積について2010年~2020年の推移を分析するとともに、2035年までの見通しを試算したものです。
今後の見通しを試算したところ、今後、すべての作物で経営体数と作付面積が減少し、2030年には、2020年に比較し経営体数と作付面積ともに約60%に減少すると見込まれます。また減少程度は、2010年~2020年間に減少したよりも、今後2020年~2030年にかけて減少する程度が大きく、減少程度は、加速化していくと見込まれます。
紫波町では、これまで地域農業の担い手として集落営農の設立を進め、県下では、集落営農の設立数が多く、一集落営農当たりの経営面積は、46haと県内では最も大きくなっています。
しかしながら、今回の分析では、集落営農が属している水稲の作付面積規模30ha~100haの階層の作付面積が減少してきています。また小麦の作付面積の81%を占める団体経営体(法人、非法人の集落営農)の小麦の作付面積もが減少してきています。
集落営農は、設立後、十数年経過したものの、法人化した集落営農は、30%に留まり、多くの集落営農は、非法人のままです。
非法人の集落営農では、経営者報酬と法定福利費が確保されていないため、雇用による後継者の確保がなされておらず、構成員の高齢化とともに経営規模が縮小し始めていると推察されます。一方、水稲作付面積2ha~20haの個人経営体と150ha以上の法人経営体の作付面積は増加しています。
今後、地域計画作成を通じて、個人経営体の経営規模拡大と現在ある集落営農を今後どうしていくかを検討することが必要ではないかと考えられます。
地域の集落営農が法人化して法人として経営することが可能なのか、それとも法人化が困難なのかを地域で話し合って、法人化が困難な集落営農は、現存の集落営農組織を母体として地域の農地を一元的に管理する主体を設立し、地域で農地を維持していく仕組みを構築することが必要ではないかと考えられます。
2020年の紫波町の基幹的農業従事者の平均年齢は69.56歳です。2019年の我が国の健康寿命は男性が72.68年、女性が75.38年ですので、紫波町の基幹的農業者の平均年齢はまもなく健康寿命に達し、今後、急激にリタイアする農家が出てくると見込まれます。
地域計画の作成は正に待ったなしの状況となっています。
本報告書を地域計画の作成に活用していただければ幸いです。
第22号「紫波町の作物別経営体数及び作付面積の推移と今後の見通し」23.6.26公表用.pdf
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