産業政策監調査研究報告第12号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」(令和3年度実績)
はじめに
紫波町では、農業従事者の高齢化によるリタイヤにより、将来平坦地域で水田が大量に供給されてくると見込まれています。一方農地の需要者である認定農業者も高齢化が進み農地を引き受けるのが困難になってきています。(詳しくは産業政策監調査研究報告第1号、2号及び7号参照)
こうした中で、地域の重要な担い手となっている大規模農業法人や集落営農組織には、農地の貸地希望が多く寄せられていますが、これ以上水稲を栽培する水田として借り受けるのが困難で畑作物を栽培する水田として引き受けざるを得ないという状況になってきています。
水稲に代わるものとして、子実用トウモロコシは、水稲の1/20の作業時間で耕作可能な省力的な作物であり、地域の農地を大量に集積していく大規模農業法人や集落営農組織にとって、経営に取り入れていく必要がある作物と考えられます。
紫波町では、令和2年度から「水稲直播及び子実用トウモロコシ普及促進会(事務局:農研機構東北農業研究センター)」(以下 普及促進会という)と連携して、子実用トウモロコシの実証栽培と肥育牛への給与試験を行っています。令和2・3年度の実証栽培と給与の結果は、次の通りです。
<令和2年度>
・子実用トウモロコシ 栽培面積 1.4ha
・平均単収 550kg/10a(水分15%)
(排水良好田の平均単収 741kg/10a、排水不良田の平均単収 437kg/10a)
・ラップサイレージ供給量 10t、堆肥還元量 100t
・肉用牛への給与 問題なし
<令和3年度>
・子実用トウモロコシ 栽培面積 2.8ha
・平均単収 608kg/10a(水分15%)
(排水良好田の平均単収 838kg/10a、排水不良田の平均単収 385kg/10a)
・ラップサイレージ供給量17t、堆肥還元量150t
・肉用牛への給与 問題なし
排水良好田では、連作により単収が向上し、普及促進会が目標とする単収800kg/10aが達成されてきていますが、排水不良田では、目標単収を大きく下回る結果となっています。
そこで、令和3年度は、令和2年度と同様に普及促進会とともに真空播種機と収穫機械の実演会を開催し、子実用トウモロコシの町内外への普及を図ってきました。
単収増に向けた試みとして、紫波町で実証栽培している排水不良田の排水改善のために株式会社みちのくクボタ様のご協力でカットドレーンの施工を実施しました。また今後モバイルドライヤの導入を検討するためにモバイルドライヤの稼働状況調査を実施しました。
結果の検証を兼ねて普及促進会と共催で令和3年12月17日に「紫波町における子実用トウモロコシ産地化検討会」を開催しました。検討会には、50ha以上の経営面積を持つ農業法人と集落営農組織14経営体が参加し、子実用トウモロコシ栽培への関心が高まってきていると思われました。
本報告書では、令和3年度の活動実績、カットドレーン、モバイルドライヤの稼働状況調査、実証栽培結果、検討会で報告した「紫波町で子実用トウモロコシに取り組む背景とねらい」についてまとめてあります。
今後、子実用トウモロコシの栽培に取り組む方々の参考にしていただければ幸いです。
調査・研究
第35号「紫波町水分地区の担い手及び農地の見通しと今後の対応方向」
第34号「紫波町における地域・年齢別基幹的農業従事者割合」
産業政策監調査研究報告分類別一覧表について
産業政策監調査研究報告第33号「地域農業持続のためのグランドデザイン」
第32号「地域計画作成に向け想定する水田作経営の担い手の姿と確保方策」
産業政策監調査研究報告第31号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅱ」
産業政策監調査研究報告第30号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅰ」
産業政策監調査研究報告第29号「地域計画作成に向けた集落営農実態調査の分析」
産業政策監調査研究報告第28号「2020年農林業センサス紫波町農業集落別データブック」
産業政策監調査研究報告第27号「地域計画作成に向けた認定農業者の分析と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第26号「地域計画作成に向けた農林業センサスの分析」
産業政策監調査研究報告第25号「産業政策監におけるEBPMとアジャイル型プロジェクト」
産業政策監調査研究報告第24号「紫波町の農業の担い手確保に向けた統計分析と対応方向」
産業政策監の農村政策フェロー小川勝弘が東北農業経済学会学会賞を受賞しました。
産業政策監調査研究報告第23号「地域計画作成に向けた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」
産業政策監調査研究報告第22号「紫波町の作物別経営体数と作付面積の推移と見通し」
産業政策監調査研究報告第21号「紫波町の認定農業者の特徴と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第20号「子実用トウモロコシ産地化の課題と対応方向」
産業政策監調査研究報告第12号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」(令和3年度実績)
産業政策監調査研究報告第13号「農村政策フェロー3年間の活動実績」
産業政策監調査研究報告第14号「地産地消が地域経済と二酸化炭素削減に及ぼす効果の試算」
産業政策監調査研究報告第15号「紫波町の集落営農の特徴と今後の方向」
産業政策監調査研究報告第16号「畑に見いだす新たな価値」
産業政策監調査研究報告第17号「地域の農地を一元的に管理する管理主体の創設」
産業政策監調査研究報告第18号「財務諸表から見た紫波町の集落営農の展開方向」
産業政策監調査研究報告第19号「紫波町の新たな農業の取組みと農村政策フェローのジャンル確立」
産業政策監調査研究報告第1号「紫波町認定農業者の定量的分析と農地の需要見通し」
産業政策監調査研究報告第2号「紫波町の農業経営体数の予測と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第3号「農業体験農園シンポジウムの開催状況」
産業政策監調査研究報告第4号「古館農業体験農園の取組状況と盛岡市市民の農業体験農園の意向」
産業政策監調査研究報告第5号「紫波町の農業生産構造動向分析」
産業政策監調査研究報告第6号「農村政策フェローの活動状況」
産業政策監調査研究報告第7号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」
産業政策監調査研究報告第8号「紫波町における旧町村別農業生産構造の特徴と人・農地プランの実践」
産業政策監調査研究報告第9号「紫波町の旧町村別農業生産構造の動向分析と今後の農業振興策の考え方」
産業政策監調査研究報告第10号「畑からはじまる心地よい暮らしの集い開催状況」~畑を利用して活動している各団体の活動内容~
産業政策監調査研究報告第11号「紫波町における人・農地プランの取組状況」