産業政策監調査研究報告第24号「紫波町の農業の担い手確保に向けた統計分析と対応方向」
は じ め に
現在、農業従事者の高齢化の進展と農業後継者の不足により、地域の農業の担い手をいかにして確保していくか最大の課題となっています。特にも、これまで兼業農家が60歳の定年後に自家の農業や地域の集落営農の働き手として農村に還流していましたが、近年の定年年齢の引き上げや再雇用制度の浸透により、60歳以上の兼業農業従事者の農業への還流が急激に減少してきています。
本報告は、農業の担い手確保方策を検討するにあたり、農林水産省の新規就農者調査、認定農業者の経営改善計画、農林業センサス、水田作経営の法人と非法人の集落営農組織の財務諸表を分析して紫波町の農業の担い手の現状と課題、水田作経営体の今後の見通しを明らかにしています。
また、本稿の分析結果に基づき今後の水田作経営の担い手のめざす姿とその担い手の姿に即した新規就農者確保対策の考え方を整理しています。
ただし、第5章水田作経営体の今後の見通し、第6章就農タイプ別新規就農者確保対策、第7章地域おこし協力隊による人材確保は、本報告書の分析結果に基づいた対応方向として整理しているもので、現時点では、農業関係機関団体と協議して組織的にオーソライズされたものではありませんのでご留意願います。あくまでも今後の検討材料としてまとめているものです。
地域で担い手不足が深刻化している中で、新規就農者の確保育成を積極的に推進することが重要なことは言うまでもありませんが、現下の農業情勢では、現在地域農業の担い手となっている認定農業者においても個人経営で後継者が確保できている割合は43%にとどまっています。
したがって新規就農者の確保対策を講じることはもとより、認定農業者の後継者確保対策も必要と考えられます。
新規就農者の確保対策を講じる場合は、具体的にどこで、新規就農者が必要なのかを明らかにして募集するとともに、募集する側で研修体制、経営開始にあたって必要になる農地、機械、施設等の支援、就農後に農業で暮らしていける経営基盤が確立できるという道筋を立てることが必要と考えます。それらの体制を整えた後に新規就農者の確保対策を進めるべきではないと考えられます。
なお、本報告書の各章に関連する産業政策監調査研究は、以下の報告書となっていますので、本報告書と併せてご覧いただくとより詳細な分析結果をご覧いただけます。
<第2章 紫波町の認定農業者の現状>
第1号「紫波町認定農業者の定量分析と農地の需給見通し」(令和2年10月)
第21号「紫波町の認定農業者の特徴と農地の需給見通し」(令和5年5月)
<第3章 紫波町の水田作経営の動向>
第22号「紫波町の作物別経営体数及び作付面積の推移と今後の見通し」令和5年6月
<第4章 紫波町の水田作経営の法人と非法人の集落営農の財務諸表の特徴>
第18号「財務諸表の分析に基づく紫波町の集落営農の展開方向」令和5年1月
<第5章 紫波町の水田作経営の今後の見通し>
第17号「地域の農地を一元的に管理する管理主体の創設」令和4年8月
24号「紫波町の農業の担い手確保に向けた統計分析と対応方向」公開版2024.1.25.pdf
調査・研究
第35号「紫波町水分地区の担い手及び農地の見通しと今後の対応方向」
第34号「紫波町における地域・年齢別基幹的農業従事者割合」
産業政策監調査研究報告分類別一覧表について
産業政策監調査研究報告第33号「地域農業持続のためのグランドデザイン」
第32号「地域計画作成に向け想定する水田作経営の担い手の姿と確保方策」
産業政策監調査研究報告第31号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅱ」
産業政策監調査研究報告第30号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅰ」
産業政策監調査研究報告第29号「地域計画作成に向けた集落営農実態調査の分析」
産業政策監調査研究報告第28号「2020年農林業センサス紫波町農業集落別データブック」
産業政策監調査研究報告第27号「地域計画作成に向けた認定農業者の分析と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第26号「地域計画作成に向けた農林業センサスの分析」
産業政策監調査研究報告第25号「産業政策監におけるEBPMとアジャイル型プロジェクト」
産業政策監調査研究報告第24号「紫波町の農業の担い手確保に向けた統計分析と対応方向」
産業政策監の農村政策フェロー小川勝弘が東北農業経済学会学会賞を受賞しました。
産業政策監調査研究報告第23号「地域計画作成に向けた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」
産業政策監調査研究報告第22号「紫波町の作物別経営体数と作付面積の推移と見通し」
産業政策監調査研究報告第21号「紫波町の認定農業者の特徴と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第20号「子実用トウモロコシ産地化の課題と対応方向」
産業政策監調査研究報告第12号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」(令和3年度実績)
産業政策監調査研究報告第13号「農村政策フェロー3年間の活動実績」
産業政策監調査研究報告第14号「地産地消が地域経済と二酸化炭素削減に及ぼす効果の試算」
産業政策監調査研究報告第15号「紫波町の集落営農の特徴と今後の方向」
産業政策監調査研究報告第16号「畑に見いだす新たな価値」
産業政策監調査研究報告第17号「地域の農地を一元的に管理する管理主体の創設」
産業政策監調査研究報告第18号「財務諸表から見た紫波町の集落営農の展開方向」
産業政策監調査研究報告第19号「紫波町の新たな農業の取組みと農村政策フェローのジャンル確立」
産業政策監調査研究報告第1号「紫波町認定農業者の定量的分析と農地の需要見通し」
産業政策監調査研究報告第2号「紫波町の農業経営体数の予測と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第3号「農業体験農園シンポジウムの開催状況」
産業政策監調査研究報告第4号「古館農業体験農園の取組状況と盛岡市市民の農業体験農園の意向」
産業政策監調査研究報告第5号「紫波町の農業生産構造動向分析」
産業政策監調査研究報告第6号「農村政策フェローの活動状況」
産業政策監調査研究報告第7号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」
産業政策監調査研究報告第8号「紫波町における旧町村別農業生産構造の特徴と人・農地プランの実践」
産業政策監調査研究報告第9号「紫波町の旧町村別農業生産構造の動向分析と今後の農業振興策の考え方」
産業政策監調査研究報告第10号「畑からはじまる心地よい暮らしの集い開催状況」~畑を利用して活動している各団体の活動内容~
産業政策監調査研究報告第11号「紫波町における人・農地プランの取組状況」