産業政策監調査研究報告第1号「紫波町認定農業者の定量的分析と農地の需要見通し」
紫波町の認定農業者の経営改善計画を分析したものです。認定農業者の目標面積を集計し農地の需要量を試算しています。
認定農業者は、現在取り組まれている人・農地プランの中心経営体として位置付けられることから、人・農地プランの実質化にあたって、町内の認定農業者について、現状と目標を正確に把握する必要があります。このため、町では、認定農業者の現状を正確に把握するとともに今後の動向を定量的に把握するために「認定農業者関係データベース」(以下「データベース」という)を作成し分析を行いました。
本報告書は、データベースを活用し、認定農業者の現状と目標を定量的に分析するとともに、経営改善計画の目標面積を作物ごとに集計し、今後認定農業者の経営規模拡大による農地の需要見通しを試算しています。報告書の項目と分析結果の要約は以下の通りです。
1 認定農業者関係データベース
認定農業者の経営改善計画書を保存していて簡単に申請書を参照したり、経営改善計画書の主要
項目で集計したり、ソーティングすることができます。また認定農業者の経営指導に必要な紫波町、岩手県、農林水産省の関係資料が参照できます。
2 認定農業者の認定状況
紫波町の認定農業者数は、これまで200経営体前後で推移してきましたが、平成28年以降微減傾
向となっています。地区別では、志和、水分で認定農業者が多く日詰、古館で少なくなっていま
す。経営形態別では個人経営の認定農業者が153経営体(78%)、共同申請が12経営体(6%)、法
人経営が31経営体(16%)となっています。法人経営が多いのは水分9経営体、長岡7経営体で日
詰、古館には法人経営体がありません。
2020年時点での認定農業者の年齢は66歳~70歳が51経営体で最も多く、次いで71歳~75歳が
38経営体と高齢化が進んでいます。このため、新規の認定農業者が無いと仮定した場合2030年には80歳以下の認定農業者数が120経営体(2020年対比73%)、70歳以下が46経営体(同38%)、60歳以下が16経営体(同35%)と若い認定農業者が著しく減少すると見込まれます。
3 認定農業者の作目別経営規模
水稲、小麦、果樹では大規模な法人と小規模な個人に2極分化しています。
4 6次産業化の取組状況
6次産業化は法人経営のような労働力に余裕がある経営で実践されており、部門別では、米の直販・加工や果樹の加工が多くなっています。
5 認定農業者の労働力の状況
認定農業者の労働力を町全体で合計すると主たる従事者は381人、従たる従事者は233人、農業後
継者は81人で個別経営の認定農業者で後継者がいる割合は53%にとどまり、約半数には後継者がい
ません。
6 認定農業者の経営改善計画と達成状況
認定農業者が目標としている所得の伸びは、現状の120%が最も多いですが、目標年に到達した時点での認定時からの所得の伸び率は、100%が最も多く、また伸び率が110%以上と90%以下がほぼ同数あり、必ずしも目標所得は達成されていません。
7 認定農業者の目標面積から見た農地の需要見通し
認定農業者の経営規模拡大で必要となる農地面積は農地合計で343haと見通され、地目別では田
が315ha、樹園地が7haと見通されます。樹園地は、果樹農家の高齢化により離農する農家の樹園地
の引き受け手がなく廃園や放任園になることが懸念されます。
第1号「紫波町認定農業者の定量的分析と農地の需要見通し」 (PDFファイル: 1.4MB)
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