第46号「農地の一元的管理主体創設の 段階的合意形成と経営の一元化」最終更新日:2026年07月06日
紫波町における農地の一元的管理主体として、2020年に「一般社団法人里地里山ネット漆立」が設立されました。これは全国で5番目、東日本では最初となる事例であり、全国的には「地域まるっと中間管理方式」として知られている取組です。同方式の導入地区数は、2026年5月時点で全国40地区に達するなど一貫して増加傾向にあります。
しかしながら、当町では同法人に続く2例目の設立がなく、普及が進んでいないのが現状です。普及が停滞している背景には、大きく分けて2つの要因があります。
1つ目は、集落営農組織における法人化への躊躇です。法人化要件の緩和が進む一方で、法定福利費や税負担の増加、経理の煩雑化といった経営リスクへの懸念から、完全な法人化に踏み切れない組織が少なくありません。
2つ目は、導入初期の「特定農作業委託方式」が抱える課題です。この方式は農地集積の合意形成が極めて容易である反面、従来の個別経営と法人の直営部門が併存するため、農業機械・施設や労働力といった経営資源が法人内部に蓄積されにくいという課題を抱えています。
特定農作業受託を担う地域の農業者が高齢化し一斉にリタイアを迎えた場合、法人が農地の受け皿として機能不全に陥ることが懸念されます。
地域全体の合意形成をクリアしながら、持続可能な一元的経営管理をする法人の創設を同時に実現することは困難です。 そこで本報告書では、設立当初の法人のリスクを抑えつつ、徐々に経営資源を法人へ集約させていく「段階的な経営の一元化」の考え方を提案しています。
具体的には、以下の4つの経営方式の発展段階を概念図とともに整理しています。
第1段階:特定農作業委託方式(農地保全を目的とする法人設立)
第2段階:担い手枝番管理方式(担い手の自主性を尊重しながら経営資源を法人に集約)
第3段階:従業員エリア担当方式(担い手の個人事業主から法人職員への変容と成果報酬型給与)
第4段階:法人一元管理方式(企業的農業経営)
これらの経営方式と発展段階は、地域の実情や前身となる集落営農組織の実情に応じて多様に変容すると考えられるため、参考とするイメージに留まりますが、最終的には「若者がサラリーマンとして安心して農業に就職できる魅力ある会社」を実現することを目指しているものです。
なお、実際の法人化や経営方式の移行にあたっては、様々な税務・労務上の手続きが発生するため、税理士や社会保険労務士等の外部専門家との連携が必要となります。
本報告書を「農地の一元的管理主体」の創設を検討する際に参考にしていただければ幸いです。
報告書は以下をクリックするとご覧いただけます。また報告書の目次をクリックしていただくと本文を見ることが出来ます。
第46号「農地の一元的管理主体創設の段階的合意形成と経営の一元化」公開版2026.7.6.pdf
調査・研究
第46号「農地の一元的管理主体創設の 段階的合意形成と経営の一元化」
農村政策調査研究報告一覧(公表順、分類別)
第45号「紫波町の農業生産構造の動向分析」
第44号「紫波町における地域計画策定経過と実現に向けた取組」
農村政策調査研究第43号「担い手の減少が著しい地域における農地継承方策の検討」
第42号「地域農業動向予測システムの地域計画での活用」
第41号「紫波町における地域計画策定経過と今後の展開方向」
第40号「生成AIを活用したリンゴ作経営の雇用労働力確保対策のケーススタディ」
第39号「農地中間管理事業を活用した農地の一元的管理の考え方」
第38号「紫波町におけるビール用大麦生産の取組経過」
第37号「紫波町水分地区における地域計画策定経過」
第36号「地域計画作成支援と6年間の活動振返り」
第35号「紫波町水分地区の担い手及び農地の見通しと今後の対応方向」
第34号「紫波町における地域・年齢別基幹的農業従事者割合」
産業政策監調査研究報告分類別一覧表について
産業政策監調査研究報告第33号「地域農業持続のためのグランドデザイン」
第32号「地域計画作成に向け想定する水田作経営の担い手の姿と確保方策」
産業政策監調査研究報告第31号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅱ」
産業政策監調査研究報告第30号「紫波町の地域計画作成に向けた農業経営の意向調査の分析Ⅰ」
産業政策監調査研究報告第29号「地域計画作成に向けた集落営農実態調査の分析」
産業政策監調査研究報告第28号「2020年農林業センサス紫波町農業集落別データブック」
産業政策監調査研究報告第27号「地域計画作成に向けた認定農業者の分析と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第26号「地域計画作成に向けた農林業センサスの分析」
産業政策監調査研究報告第25号「産業政策監におけるEBPMとアジャイル型プロジェクト」
産業政策監調査研究報告第24号「紫波町の農業の担い手確保に向けた統計分析と対応方向」
産業政策監の農村政策フェロー小川勝弘が東北農業経済学会学会賞を受賞しました。
産業政策監調査研究報告第23号「地域計画作成に向けた農地の需給見通しとリーディングプロジェクト」
産業政策監調査研究報告第22号「紫波町の作物別経営体数と作付面積の推移と見通し」
産業政策監調査研究報告第21号「紫波町の認定農業者の特徴と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第20号「子実用トウモロコシ産地化の課題と対応方向」
産業政策監調査研究報告第12号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」(令和3年度実績)
産業政策監調査研究報告第13号「農村政策フェロー3年間の活動実績」
産業政策監調査研究報告第14号「地産地消が地域経済と二酸化炭素削減に及ぼす効果の試算」
産業政策監調査研究報告第15号「紫波町の集落営農の特徴と今後の方向」
産業政策監調査研究報告第16号「畑に見いだす新たな価値」
産業政策監調査研究報告第17号「地域の農地を一元的に管理する管理主体の創設」
産業政策監調査研究報告第18号「財務諸表から見た紫波町の集落営農の展開方向」
産業政策監調査研究報告第19号「紫波町の新たな農業の取組みと農村政策フェローのジャンル確立」
産業政策監調査研究報告第1号「紫波町認定農業者の定量的分析と農地の需要見通し」
産業政策監調査研究報告第2号「紫波町の農業経営体数の予測と農地の需給見通し」
産業政策監調査研究報告第3号「農業体験農園シンポジウムの開催状況」
産業政策監調査研究報告第4号「古館農業体験農園の取組状況と盛岡市市民の農業体験農園の意向」
産業政策監調査研究報告第5号「紫波町の農業生産構造動向分析」
産業政策監調査研究報告第6号「農村政策フェローの活動状況」
産業政策監調査研究報告第7号「紫波町における子実用トウモロコシ産地化の取組状況」
産業政策監調査研究報告第8号「紫波町における旧町村別農業生産構造の特徴と人・農地プランの実践」
産業政策監調査研究報告第9号「紫波町の旧町村別農業生産構造の動向分析と今後の農業振興策の考え方」
産業政策監調査研究報告第10号「畑からはじまる心地よい暮らしの集い開催状況」~畑を利用して活動している各団体の活動内容~
産業政策監調査研究報告第11号「紫波町における人・農地プランの取組状況」
